【つかいてレポート】建設業の現場に生かされる女性目線
2025年2月初旬
広島市安佐南区緑井の川の内線 橋りょう上部の工事現場と、その工事を請け負われている極東興和株式会社広島支店の現場と作業所(事務所)に視察に伺う機会がありました。
この地区は、2014年8月20日豪雨土砂災害の被災地です。
土砂が押し寄せた山の斜面にある細道と、国道54号線の間には、JR可部線の線路があり、容易には緊急車両が行き着かない難所でした。
ここに、橋梁(きょうりょう)、橋をつなぐということは、国道54号線への移動の課題を解決するものだそうです。2024年2月から準備がはじまり、2025年3月、いよいよ完成間近になったので、見学する機会をいただきました。
建設工事現場ということで、厳しい環境の中での作業なのかなと想像をしていたのですが、まったく違った発見をして、驚きました。その発見ポイントをレポートしてみます。
【発見① 工事現場の様子が一望できる展望台があった】
この工事現場のそばに、ウッドデッキの展望台が作られていて、一望できます。ご近所の住民が犬の散歩のときなどに、この展望台に上って、一休みしながら少しずつ着工が進む工事の様子を眺めているそうです。
展望台のそばに、サイネージが設置されていて、施工担当の極東興和株式会社さんの現場で働く従業員の様子、近くの作業所(事務所)の中での仕事中の様子などを紹介されていました。
どんな会社がこの橋りょう工事に携わっているのか、だれでも見られるような工夫です。
右の写真は、展望台から眺めた建設中の橋りょう上部部分 先は、国道54号線。 左の写真は 左 インフォメーションセンター 右 ウッドデッキ風の展望台 |
|
【発見② 現場にインフォメーションセンター。カフェのイメージ】
その横にさらにインフォメーションセンターという建物があります。
この部屋は訪れた方への情報提供の場として作られています。室内に展示物が掲示され、訪れた方の感想や意見を一言メモしたものを展示されています。時には、就活のインターンで訪れる学生が利用する部屋としても活用されたそうです。
展望台もインフォメーションセンターも、本来なら工事現場には必要がないものと言われるかもしれませんが、住民の方との交流や声を聞く機会にもつながります。これらの施設は、余分なコストではなく、会社のブランディングにもつながる必要経費とみなし、実務と並行して外部コミュニケーションをとる設備や運営を用意されたことはすごい!と感心しました。
![]() インフォメーションセンターの看板
|
![]() テーブルもグリーンも手づくり
|
町内会長さんからのお手紙が額に。 見学者のメッセージも。 |
【発見③ 作業所(事務所)のあちこちに、女性目線が生かされて】
作業所(事務所)の中も見学させていただきました。
驚いたのはプレハブの建物というイメージを払しょくする、さまざまな設備や、装飾です。
壁がガラスばりになっている明るい部屋、入り口に入ると、正面にフェイクグリーンのウォールグリーンが目につきます。
右にはヘルメットをきちんと壁に収納されていて、靴箱も整理整頓されています。
男女のトイレや更衣室が別になっているということは、とても大きなポイントだそうです。
正面も女性用更衣室は、明るくて、ハワイアンイメージの壁紙、シール、色使い。
事務所内に入ると、奥に従業員の席が並び、手前には、打合せテーブル以外に、丸テーブルにカラフルな椅子、ネスレのコーヒーコーナーを明るい色のパテーションで仕切って作られています。壁には、ピカソのレプリカの絵が飾られて、観葉植物のグリーンも置かれています。
入り口正面のウォールグリーン |
![]() カイロとマスクがご自由に。完成予想図も。 |
![]() 整理整頓された事務所。整頓することが安全につながり、仕事の効率化になる。 |
![]() 手づくりパテーションとカフェカウンター。 |
![]() 丸いテーブルとカラフルな椅子とカーペット。くつろぎのスペース。 |
![]() 打合せのテーブルとディスプレイ。
|
![]() ヘルメットと靴 整理整頓のこだわり |
![]() 女子更衣室はハワイアンのイメージで |
![]() 作業所の外観には、花壇で花も育てています。 |
この事務所の環境整備は女性社員の方の意見を多く採用されています。
工事現場から帰ってきて、ほっとくつろぐ家庭的な雰囲気がほしい。
従業員が気持ちよく過ごせるように、明るくおしゃれな空間にしたいと、室内装飾を専門家に依頼したそうです。専門家の業者さんも、あまった材料でパテーションを作ったり、大工さんと手づくりのテーブルやグリーン装飾パネルを作ったり、コストを抑えながらもイメージはカフェみたいにという希望にこたえてくれたそうです。
若い従業員や女性従業員が過ごしやすい環境を作ることで、建築業のイメージを払拭し、若者や女性社員の採用のためにも、改革していきたいという責任者の方の気持ちが、このような環境整備のチャレンジにつながっているそうです。
【まとめ 発信することは大切だ】
作業所(事務所)のディスプレイや環境整備も無駄、削るべきコストかもしれませんが、別のところで売り上げをあげて、必要な経費として計上できるように努力するというポリシーのもと、この現場ではチャレンジしてきた1年間だったそうです。
社内の環境を整えること、そして、それを外部に知っていただく発信をすることは、業種に関わらず、よい人材を集め、結果、よい仕事をしていくうえで、重要なことです。
また住民の方との交流が持てることで、従業員の仕事のやりがいや自信につながります。
そのために、女性目線での細やかな気づきやアイディア、提案、それを実践する上司の理解、会社の理解は、企業ブランディングに大きな役割をもたせていると実感しました。
現場は来月3月で竣工のため、この素敵な作業所も展望台もなくなってしまうのかなと思うともったいない気もしますが、次の現場もぜひ、魅力的な職場づくりに挑戦していただきたいです。
(参考)
現場の近くに、広島市豪雨災害伝承館 があります。2014年豪雨災害で77名がなくなられた災害のことを、改めて知って、防災のことも身近に感じる機会となります。
広島市豪雨災害伝承館
広島市安佐南区八木3丁目24-23
会館時間10:00~17:00 休館日:月、祝休日の翌日、8月6日、年末年始
取材協力 極東興和株式会社 広島支店
https://www.kkn.co.jp/ja/index.html
<ありがとうございました!>
Marketer
フク / 夫と2人ぐらし。
今回の取材で、住民の方のためにとても重要な橋の建設をされているという業務の重責の中でも、従業員が働きやすい環境づくりを工夫してチャレンジされていることに、とっても驚きました。
すべてがこのような現場の状況にはならないこともあるかもしれませんが、それでもできる限りチャレンジする姿勢に、学ぶことがとても多い見学でした。おかげで、いつもより熱のはいったレポートになりました。