就職氷河期世代と呼ばれる、おおむね35~55歳の男女を対象に、就職・正社員化、多様な社会参加への実現支援を目的として設置された、「就職氷河期世代活躍支援ひろしまプラットフォーム」。同プラットフォームを通じ、広島労働局から委託を受けて立ち上がったのが就職氷河期世代活躍支援プロジェクト「サスティナブルなワーキング」です。“持続可能な働き方”をテーマに、セミナーや説明会、ワークショップを行います。
今回は、7月19日に企業様向けに『採用難を解決!ウェルビーイングと人財の時代』と題した、オンラインセミナーを開催。人が集まる、魅力的な会社経営を行う2人のスペシャル講師から、採用についてのテクニックを学びました。
第一部の講師を務めてくださったのは、株式会社ハー・ストーリィ 代表取締役 日野佳恵子さん。女性の消費行動に着目した研究を続け、女性視点マーケティングという独自理論を発表。近年は一般社団法人「女性の実学協会」を立ち上げ、イノベーションを起こせる人材の育成を目指しています。
広島市で創業して東京に移転、コロナ禍を経て社員全員がフルリモートとなった日野さんの会社が、これまでどういう道のりを歩んだのか、まずは簡単に経緯をお話しくださいました。日野さんが当初着目したのは、結婚や出産、育児というライフスタイルの変化があっても「変わらず働き続けたい」と願う女性たちの気持ち。だったらその働く場を提供しようというのが原点だったと話します。
日野さんの会社は、2022年に発売された書籍「100年残したい日本の会社」10社に選ばれたり、転職サイトで求人を出せば280~300倍という高倍率の応募がくる人気企業に成長しています。その理由は、日野さん自身が、働きたいと考える人の気持ちにしっかりと寄り添ってきたから。
人手不足が顕著で「良い人材が欲しい」と考える企業と、「魅力的な会社で働きたい」と考える就職希望者。そこにはすでに両者の思いの乖離が生まれていると、日野さんは説きます。
今回テーマとなっている「ウェルビーイング」とは、Well(良い)とBeing(状態)を合わせた、心身共に満たされた状態を指す概念です。では、実際に働いている人たちは、このウェルビーイングという状態を叶えられているのでしょうか?
かつて、優良な企業経営の手法のひとつに「健康経営」という言葉が用いられていました。これは企業の持続的な成長を目的とした従業員の健康施策のことで、最終的に目指すのは「“企業価値の向上による”経営目的の達成」です。しかし、昨今登場している「ウェルビーイング経営」は、良好な健康状態のみにとどまらない個人の働きがいや自己実現に向けた取り組み全般を指し、最終的に「“パーパス(存在意義)の実現による”経営目的の達成」を目指します。どちらも経営目的の達成を目標にしているのは同じですが、企業の価値という会社にメリットのある部分に重きを置くのか、そこで働く人たちの存在意義の実現に目を向けるのか、その点が大いに異なります。
これから人手不足がますます深刻化する中で、大事になってくるのは“働きたいと思ってもらえる会社になれるかどうか”です。会社はそれぞれに課題を抱えていると思いますが、例えば「テレワークの導入でメンタルヘルス不調者が増えた」なら、ストレスチェックなどの「安全と衛生」に気を配る必要があるし、「女性従業員の離職率が改善しない」なら、女性活躍や両立支援を行う「働きやすさ」に注力しなければなりません。
また、「若年層の転職が増えてきた」という課題には、より「生きがい」に着目した労働環境を構築していくことが必要です。社員一人ひとりが生まれた時代、どういった教育を受けて、何をファーストプライオリティに考えているのか、そのあたりを汲み取ったリクルート、あるいは会社経営を行っていかねばならないと、日野さんは教えてくださいました。
ほかにも、過去に日野さんが手がけた求人広告を用いながら、単なる労働条件を掲載するだけではない、相手の心に響くキャッチコピーや印象的なイラストで求人応募がぐんと上がった例や、スタッフが大量に辞めてしまったある医療機関が、働く人たち一人ひとりにスポットを当てて環境改善を行ったところ、県外からも「働きたい」と人が殺到するようになった話など、具体的な手法を交えながら紹介してくれました。
さらに企業として宣伝となるような“タイトル”(「女性活躍企業」や「健康経営企業」といった認定)を獲ること、時代に合った新しい取り組みを勉強すること、シニアの積極雇用の事例を知ることなど、“採用と経営”において、今しておきたいことを複数提案。
最後はまとめとして、「コロナ経験から皆が“幸せ”を考えて行動するようになった世の中で、誰もがウェルビーイングの場所を求めています。職場もまた、それが叶えられる場のひとつだと思うし、自然と人が集えるような、選ばれる会社になりましょう」と、エールを送ってくださいました。
その後、セミナーは休憩を挟んで第二部 クロストーク へ …
少し長くなるので、vol.2に続きます
《就職氷河期活躍支援プロジェクト「サステナブルなワーキング」特設サイト》